ダンマパダこころの清流を求めて

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第一 対[句]の章
YAMAKA VAGGA(THE TWIN VERSES)


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第13・14偈 ナンダ長老

ナンダは森の中で瞑想の修行をした。しかし、花嫁のあの美しい姿が走馬灯のように浮かんでは消え・・・

[偈: Gāthā]
13. 粗末そまつ屋根やね ふきをしたいえあめ れるように、 修養しゅうよう のないこころ に、貪欲むさぼり侵入しんにゅう する。

[パーリ語: Pali]
Yathā agāraṁ ducchannaṁ / vuṭṭhī samativijjhati
Evaṁ abhāvitaṁ cittaṁ / rāgo samativijjhati.

[英語: English]
Even as rain penetarates an ill--thatched house, so does lust penetrate an undeveloped mind.

[偈: Gāthā]
14. 丁寧ていねい によく屋根やね ふきをしたいえあめ らないよ うに、修養しゅうよう されたこころ に、貪欲むさぼり侵入しんにゅう しない。

[パーリ語: Pali]
Yathā agāraṁ succhannaṁ / vuṭṭhī na samativijjhati
Evaṁ subhāvitaṁ cittaṁ / rāgo na samativijjhati

[英語: English]
Even as rain does not penetrate a well--thatched house, so does lust not penetrate a well -- developed mind.

[因縁物語: Story]
※仏陀が悟りを開かれ、最初に説法された後、マガタ国 王舎城(Rājagaha)外にある竹林精舎(Veḷuvana)におられた頃である。

仏陀の父上スッドーダナ王(Suddhodana)は、「故郷のカピラヴァットゥ(Kapilavatthu)に、ぜひ一度訪ねて欲しい」という 使者を幾度となく仏陀のもとへ送った。 しかし、その多くの使者たちは、仏陀の教えに魅せられて、次々と出家して比丘となり、熱心に修行した結果、悟りの第四段階である阿羅漢(Arahaṁ)を得た。

その時、使者の一人であったカーラウダーニ(Kāḷa Udāyi)長老は、自分の役目を思い出した。 そして、仏陀は、カーラウダーニ長老の案内でほかの比丘たちといっしょにカピラヴァットゥを訪ねられた。

故郷に帰られた仏陀は、第一日目に、シャカ族の人々に説法された。二日目に、施しを受けるため王宮に行かれ、 そこでも説法され、父上スッドーダナ王は、悟りの第二段階である一来果(Sakadāgāmiphala)を、義母マハーパジャーパティー(Mahāpajāpatī)は、 その第一段階である預流果(Sotāpattiphala)を得た。

三日目に、仏陀の従兄弟にあたるナンダ王子(Nanda)の結婚式が行われた。 仏陀は、施しを受けるためにその宮殿にやって来ると、新郎のナンダ王子の両手にたく鉢の「鉢」を置き、お祝いを述べられた。 そして、席から立ち上がると、ナンダ王子から「鉢」を受け取ることなく、出かけられた。

ナンダ王子は、「鉢」にたくさんの施しを入れた後、どこで仏陀に手渡そうかと迷っている間に、 その機会を失い、「鉢」をもったまま仏陀の後に従って宮殿を出た。 そして、仏陀から出家を勧められた。その時、ナンダ王子は「私は比丘になりたくない」と答えるつもりが、 思わず「はい。私は比丘になりたいです」と逆のことを口走って しまい、髪を切って出家した。又、しばらくして、実の息子であるラーフラ王子(Rāhula)も出家した。

父上スッドーダナ王は、仏陀によって二人の王子が出家したことに不満を持ち、以後、保護者の許可を得てから出家させるように仏陀に申し入れた。 仏陀は、この申し入れを聞き届けた。

比丘となったナンダは、仲間の比丘たちと森の中で瞑想の修行をした。しかし、花嫁ジャナパダカヤーニー(Janapadakalyāṇī)の、 あの美しい姿が、走馬灯のように浮かんでは消え、彼を悩ました。

仏陀は、この比丘ナンダの悩みを理解し「もっと修行すれば、三十三天界(Tāvatiṁsa)にいる美しい女神たちを得ることができる。 私がその保証人となろう」とアドバイスされた。これを励みに、再び比丘ナンダは修行を始めた。

しかし、ほかの比丘たちから美しい女神を求めるために修行をしているという非難を受けた。これはたいへん恥ずかしいことだと反省した比丘ナンダは、 心を入れ替え、猛烈な修行に挑み、やがて阿羅漢の悟りを得た。

そして、仏陀のところへ行き、美しい女神を得るための保証人を解約していただきたいと願い出た。 仏陀は、比丘ナンダの心境の変化を見て、悟りをひらく前の比丘ナンダの心の状態を雨漏りする家に、悟りをひらいた後の心の状態を雨漏りのしない家に例えて説かれた。 そして、仏陀は、花嫁の慕情を捨てさせるために三十三天界の美しい女神たちをもって比丘ナンダを誘われたことは、これは最初でなく、彼の前世でもすでに同じ事があったと述べられた。

昔、ベナレスの町をブラフマダッタ(Brahmadatta)が支配していた頃、カッパタ(Kappata)という商人がいた。カッパタは、毎日一頭のロバを使って陶器の荷を運んでいた。 ある日、カッパタは、タッカシラーという町にやって来て、 商談をしている間、ロバを自由にしてやった。そしてロバが水路の土手のまわりで遊んでいると、一頭の雌ロバがあらわれ、二頭は仲良しになった。

商談を終えたカッパタは、ロバを連れて家に帰ろうとしたが、雌ロバとの恋愛に夢中になっているロバは、頑固にその場を離れようとはしなかった。 そこでカッパタは、優しい声で「家に帰ったら、もっと美しい雌ロバと夫婦にしてやるよ」とロバの耳元でささやいた。

家に戻って来てから数日後、美しい花嫁を待ち続けているロバは、ついに痺れを切らして「あなたは美しい雌ロバと夫婦にしてやると私に言いましたが」とカッパタにたずねた。

そこでカッパタは、「確かに言った。お前の望みどおり、その相手を連れてくる。しかし、お前には一人分の食べ物しか与えない。それだけの食べ物で、どうして妻や子を養うことができるのだ」と答えた。

「・・・・・・」ロバは、結婚を諦めた。

このカッパタ商人が、今の私であり、ロバは比丘ナンダであり、そして、雌ロバは花嫁ジャナパダカヤーニーであると語られたのである。
(第13・14偈の因縁物語)





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