ダンマパダこころの清流を求めて

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第一 対[句]の章
YAMAKA VAGGA(THE TWIN VERSES)


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第5偈 人食い鬼

子供のできない妻は、それに嫉妬し、妊娠中の新妻の食事にこっそり毒を入れ流産させた・・・それに復讐を誓い・・・その顛末。

[偈: Gāthā]
5. このにおいて、うらみは うらみによってけっして
むことはない。うらみをててこそ むのである。
これは、永遠えいえんわらぬ真理しんりである。

[パーリ語: Pali]
Na hi verena verāni / sammantīdha kudācanaṁ
Averena ca sammanti / esa dhammo sanantano.

[英語: English]
Never can hatred be stopped by hatred in this world;
only by not holding hatred, by being free from hatred do they cease.
This is an eternal law.


[因縁物語: Story]
※ある農家の息子は、父親の亡くなった後もよく仕事に精 を出し、残された母親の面倒もよくみていた。母親は、この孝行息子に早く嫁をもらうことをすすめていたが、 息子は嫁をもらう気もなく、のどかで平和な今の生活を楽しんでいた。

ある日、息子の将来を心配する母親が、嫁を探すために心あたりのある家を訪ねようとした時、 息子は母親に「どこの家に行きますか?」とたずね、「実は、私には好きな娘がいます」と言った。 やがて母親は、その娘を見つけてきて、二人を結婚させた。

しかし、この新妻は子供ができない体であった。 跡継ぎのいない息子の老後を心配する母親は、子供を産める若い娘と再婚することを息子にすすめた。 しかし、今の妻で十分だと思っている息子は、再婚話にまったく興味がなかった。

ところが、子供のできない妻にとってはショックな話であった。 「いつの日か夫は、母親の再婚話に同意するかもしれない。そうなれば、私は母親が選んだ新しい若い娘の下で 召し使いのようにこき使われるだろう。その前に、子供ができそうな若い娘を私自身の手で見つけ、 夫の新しい妻にしよう」と考えた妻は、早速、村々を駆け巡り、一人の若い娘を見つけ、夫のもとへ連れてきた。 結局、この夫は二人の妻を持つことになったのである。

新しい妻は、すぐに子供を身ごもった。子供のできない妻は、それに嫉妬し、 妊娠中の新妻の食事にこっそり毒を入れ流産させた。そして、三度目の流産の時、瀕死の重体に おちいった新妻は、前妻の仕業によって三度も流産させられ子供を殺されたことを知り、復讐を誓って亡くなった。 そして、子供のできない妻も、すべてを知った夫の怒りを受け、まもなく病気で亡くなった。

復讐を誓った新妻はネコに生まれ変わり、毒をもった前妻は鶏に生まれ変わった。 そして、鶏が卵を産むと、新妻のネコがこっそり近づいて、その卵を食べた。 三度も自分の産んだ卵を食べられた前妻の鶏は、このネコに復讐を誓い、 死後、ヒョウに、又、前妻のネコは牝鹿に生まれ変わった。

牝鹿が子供を産むと、前妻のヒョウがこれを襲い、 赤ちゃん鹿を食べた。三度も自分の子鹿を食べられた新妻の牝鹿は、このヒョウに復讐することを誓い、 死後、人食い鬼カーリ(Kāli)に生まれ変わり、又、前妻のヒョウは、若妻に生まれ変わった。

子を持つ母と、その子を食おうとする鬼になった二人の妻は、やがて、仏陀にさとされたのである。
(第5偈の因縁物語)





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