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第四章 花の章
PUPPHA VAGGA(FLOWERS)


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第49偈 ある貧しい「金持ち」

やっとお菓子ができ上がる頃、いつの間にか黄色い法衣を着た男が手に丸いボールを抱えて立っていた・・・

【偈 :Gatha】
49. ちょうど、はちはないろかお りをそこなわないで ただみつ だけを って るように、 比丘びく は、むら において 人々ひとびと信仰しんこう財産 ざいさん とをそこなわないでたくはつおこな うべきである。

【パーリ語 :Pali】
Yathāpi bhamaro pupphaṁ / vaṇṇagandhamaheṭhayaṁ
Paleti rasamādāya / evaṁ gāme munī care.

【英語 :English】
As a bee without harming the flower, its colour or scent, flies away, collecting only the honey, even so should the sage wander in the village.

【因縁物語 :Story】
※コーサラ国のある村に、コーシヤ(Kosiya)というたいへん 「けち」な金持ちがいた。富豪コーシヤは、自分に対しても他人に対しても、草の葉先についた油の一滴もあげないほど「けち」であった。

ある日、王を表敬訪問した帰り道、コーシヤは一人の痩せ細った男がお菓子をガツガツ食べているのを見て、急にお なかが減りだし、無性にお菓子が食べたくなった。

思わず「お菓子が食べたい」と言いかけた口をあわてて手で押さえ、まわりを見渡した。

「もし、誰かにこれを聞かれたならば、お菓子を食べたい連中が押し寄せ、私はそのために余計なお金を使わなければならない。人知れずお菓子を 作り、自分一人で食べよう!そのためにお菓子を作る場所を探さなければ」

とコーシヤは空腹を我慢しながら村のあっちこっちを歩き回った。

しかし、適当な場所がなかなか見つからず、激しい疲労と空腹でコーシヤの身体が、だんだん黄色くなっていき、ついにベッドに倒れた。

「あなた、あなた、一体どうしたのですか?」

という声に気がついたコーシヤに、妻が夫の背中をさすりながらたずねた。

「いや、なんでもない」

「何か嫌なことを王様から命じられたのですか?」

「いや、そんなことはない」

「家族の誰かがあなたに不愉快な思いをさ せたのですか?」

「いや、決してそんなことはない」

「じゃー、・・・何か欲しいものでもあるのでしょ?」

という妻の言葉に、コーシヤは思わず

「ごっくん」

と喉を鳴らし、唾を飲み込んだ。

「一体何が欲しいのです?」

「・・・・お 菓 子」

妻は夫を真面目に心配したことを後悔し、又、その頑固さに呆れ果てた。

そして、コーシヤと妻は自宅の屋上で密かにお菓子作りを始めた。

やっとお菓子ができ上がる頃、いつの間にか黄色い法衣を着た男が手に丸いボールを抱えて立っていた。

驚いた二人は、すばやくこの男を観察した。

この比丘こそ、仏陀の偉大な弟子であり、神通力を持っていることでも有名なマハーモッガラーナ長老 であった。

長老は、この夫婦に悟りへの第一段階を得る潜在能力があることを洞察され   た仏陀の命により、その神通力を使ってこの屋上にやって来たのである。

「どうやってここへ来たのだ!」

というコーシヤの問いに、マハーモッガラーナ長老は黙って立っていた。

薄気味悪くなったコーシヤは妻に

「お菓子のかけらでも施してやれ」

と言った。

妻はバスケットから一片を取り、長老のたく鉢の「鉢」に入れた途端、たちまち大きくなった。

あわてたコーシヤは

「大きいのをやってはいかん!小さいやつだ!小さいやつ!ええぃー、わしがする」

と言うと、自分の手でバスケットから小さい お菓子を取り上げ「鉢」に入れた。

今度は全部のお菓子がそれにくっついてきた。

二人は、何とかそれを切り離そうと力一杯引っ張ったが、うまくい かなかった。

その時、マハーモッガラーナ長老は、コーシヤにお菓子の施しを願ったのである。

「妻よ、もうお菓子はいらないから、この方に全部あげなさい」

とコーシヤは疲れ切った声で言った。

そこで長老は、

「仏陀がお二人を待っておられる。一緒に会いに行きましょう」

と声をかけ、コーシヤと妻を仏陀の元へ案内した。

そして、この夫婦は、仏陀の説法を聞いて悟りの第一段階である預流果を得た。

次の夜、比丘たちは、マハーモッガラーナ長老の活躍について語り合った。

そこへ仏陀がこられ、

「マハーモッガラーナ長老は、施しをする人の信条や財産を損なわずに施しを受けたように、比丘たちよ、人々から 施しを受ける時は、その人の信条や財産を損なってはならない」

と説かれたのである。

(第49偈の因縁物語)





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