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第五 愚者の章
BALA VAGGA(FOOL)


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第60偈 ある男

銅釜地獄(Lohakumbhi Niraya)に生まれ変わった四人の男が、沸き立つ銅釜の中で煮られながら・・・

【偈 :Gatha】
60. むられぬひと にとってなが く、つか れた旅人たびびと に とってみちながかん じられる。ただ しいダンマ らな いおろ かなひと にとって、輪廻りんね生涯しょうがい がながくつづ く。

【パーリ語 :Pali】
Dighā jāgarato ratti / dighaṁ santassa yojanaṁ
Digho bālāna saṁsāro / saddhammaṁ avijānataṁ

【英語 :English】
Long is the night to the wakeful ; long is the league to the weary; long is rebirth “samsara” to the foolish who know not the Sublime Truth.

【因縁物語 :Story】※ある日、パセナディ王(Pasenadi)が、町に出かけた時、 窓際に立っている婦人に「一目ぼれ」をした。

そして、宮廷に帰るや家臣にこの女性を調べさせると人妻であった。

それでも諦め切れない王は、じゃまな夫を宮廷に召し抱え、そして、不可能な仕事をこの夫に命じて殺すことを考えた。

その仕事とは、ここから約12マイル離れた所へ行かせ、クムダ(kumuda)という花とナーガス(Nagas)という 竜が住む所にあるアルナヴァティー(Aruṇavatī)という赤土を、王が沐浴する夕方までに宮廷に 持ち帰ってくるという一日仕事であった。

「もし、時間に間に合わなければ死刑にするぞ!」

と王から厳命された夫は、早速、妻に弁当を作ってもらい出発した。

その途中、腹がすいた夫は、川のほとりで偶然出会った旅人と一緒に妻の作った弁当を食べた。

そして、残ったご飯を川に住む竜神に施し、大声で

「この川に住んでいる竜神よ! 私の願いを聞いてください。パセナディ王は、私の妻を奪うために無理難題な仕事を命じました。 私を助けると思って、どうぞ、クムダの花とアルナヴァティーという赤土を持ってきて下さい」

と三度叫んだ。

この悲痛な叫び声を聞いた竜神は、老人に姿を変え、夫の望むものを手渡した。

無事に仕事を成し遂げた夫は、又、王から新たな難題を命じられる のを避けるため宮廷をこっそりぬけだし、僧院をたずねて、そこでゆっくり眠りの床についた。

パセナディ王は、自分の思惑通りにならなかったあの夫を夜明けと共に殺し、 その妻を奪い取る計画を立てたため興奮してなかなか寝むれなかった。

そして、真夜中に、王は恐ろしい声を聞いた。

・・・・銅釜地獄(Lohakumbhī Niraya)に生まれ変わった四人の男が、沸き立つ銅釜の中で煮られなが ら

「ド」(Du)・「サ」(Sa)・「ナ」(Na)・「ソ」(So)

と一音発しては下に沈んでいくのである。

・・・・王は、怖くなった。

「これはたいへん不吉な声だ! わが命があぶない」。

翌朝、早速王は占い師を呼んで昨夜の夢について相談した。

「王様! これはたいへん悪い卦でございます。しかし、私の言うとおりにすれば、たち まち悪い卦がよい卦に変わります。そのために、まずそれぞれ百の数の象・馬・牛・鶏・豚・少年・少女たちを生け贄として、神に捧げてください。 そうすれば、王様の命は助かります」

と占い師は言った。

そして、パセナーディ王が生け贄儀式の準備をはじめると、国中に嘆きの声がわき起こっ た。これを聞いた王妃マッリカー(Mallikā)は、馬鹿げた占いによって多くのものが不幸になるような愚行をやめさせるため、死の影におびえる 王を仏陀のところへ連れていった。

そこで仏陀は

「王よ、昔、四人の富豪がいた。彼らは遊び友達であり、お金にものをいわせて、うまい酒や豪華な料理を食べ、人妻と遊ぶという 生活をして人生を終えた。そして、死後、この四人は銅釜地獄に生まれ変わった。

この地獄は、とてつもなく大きく、三万年かかってその釜の一番 底に達し、さらに三万年かかって釜の口にとどくというもので、四人は釜の口にとどいた時、偈の一節を唱えようとしたが

「ド」「サ」「ナ」「ソ」

という各偈の一音だけ発して、又、釜の底に沈んでいき、地獄の苦しみを味わうのである。」

仏陀の説法を聞いた王は、他人の妻と寝ることの恐ろしさと一夜の長いことを知り、大いに反省したのである。

(第60偈の因縁物語)




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